
PRO BOXER × Tune Up
「休めば勝てる」
頑張りすぎるボクサーと取り組んだ試合までの疲労管理
2026年9月12日、高橋良季選手が堺市で行われた「Team 一丸×DO OR DIE MATCH×MR最強マッチ」に出場。
室田拡夢選手と対戦し、結果は1R 58秒 TKO勝利でした。
58秒。
正直、試合が早く終わりすぎて、試合内容からコンディショニングの成果を細かく分析できるほどの時間はありませんでした(笑)。
だから今回の記事では「Tune Upに来たからTKOできた」という話をするつもりはありません。
今回、私たちが大きく関わったのは試合そのものより、試合当日までの身体づくりと疲労管理でした。
目次
1. 高橋選手に声をかけた理由
高橋選手がTune Upに来るきっかけになったのは、Instagramのストーリーでした。
試合までまだ1カ月以上ある時期。
投稿を見ていて気になったのが、すでにかなり疲弊しているように見え、本来のパフォーマンスを出せていないことでした。
「この時期からこの状態では、試合まで身体がもたないかもしれない」
そう感じ、こちらから高橋選手に声をかけました。
動きが悪いと「練習が足りない」と思いがちですが、アスリートの場合は逆に頑張りすぎて本来の能力を出せていないことがあります。
2. 楽に動けるようになった。でも問題が起きた
Tune Upで身体を整え、トレーニングを行っていくと、高橋選手の身体は以前より楽に動けるようになり、パフォーマンスにも変化が出てきました。
普通なら、身体が楽になれば、その分だけ余裕が生まれます。
ところが、高橋選手は違いました。
楽になった分、さらに頑張ってしまうタイプだったんです。
身体が動くことと、疲労から完全に回復していることは同じではありません。
この「動ける=回復ではない」という考え方については、以前の記事で詳しく解説しています。
3. 筋トレをいったんやめた理由
もう一つ、高橋選手の調整で変更したことがあります。
自主トレで行っていた一部の筋力トレーニングを、いったんやめてもらいました。
高橋選手は、上腕二頭筋や大胸筋などを鍛えるトレーニングを自主的に行っていました。
ここで誤解してほしくないのですが、筋トレそのものが悪いわけではありません。
筋力やパワーを高めるための適切な筋力トレーニングは、アスリートにとって非常に重要です。
ただ、高橋選手の場合、当時行っていた自主トレ後に身体を評価すると、大胸筋や上腕二頭筋周辺の緊張が強くなり、本人が持っている動きや出力をうまく使いにくくなっている状態が見られました。
「そのトレーニングが今の選手に必要か?」
Tune Upでは、トレーニング後に競技につながる動きが悪くなっているのであれば、「鍛えたから仕方ない」で終わらせず、その内容や負荷が今の選手に適しているのかを再評価します。
高橋選手に必要だったのは、さらに筋肉を疲れさせることではなく、すでに持っている筋力をボクシングの中で使いやすい状態にすることでした。
4. 何度も伝えた「休めば勝てる」
試合が近づくにつれて、Tune Upで重要になったのはトレーニングを追加することではなくなりました。
とにかく、この言葉を何度も伝えました。
競技前には、練習強度をある程度維持しながら練習量を減らし、蓄積した疲労を抜いてパフォーマンスを発揮しやすくする「テーパリング」という考え方があります。
試合前に必要なのは、毎日限界まで追い込むことではありません。
それまで作ってきた能力を、試合当日に出せる状態にする。
高橋選手も徐々に休むことの重要性を理解してくれ、後半は休養日を増やしてくれるようになりました。

5. 休養を増やしたら800mで自己最速
そして、面白い変化がありました。
休む日を増やしたことで体力が落ちたのか?
結果は逆でした。
休養によって新しい能力が突然身についたわけではありません。
それまで練習して積み上げてきた能力が、蓄積した疲労によって隠れていた可能性があります。
だからこそ試合前は、「もっと強くなる」から「今ある強さを発揮する」へ考え方を切り替える必要があります。
6. そして1R58秒TKO勝利
迎えた9月12日。
室田拡夢選手との試合は、1R58秒で高橋良季選手のTKO勝利。
あまりにも早い決着でした。
「58秒だったので、正直、早すぎて試合内容については何も分かりませんでした(笑)」
そのため「Tune UpのコンディショニングによってTKOできた」と言うつもりはありません。
ただ、試合までの身体を見てきた中で、休養と運動の最適化によって、パンチの出力が以前より高まっていたことは感じていました。
そして何より、疲弊した状態で試合を迎えるのではなく、パフォーマンスを発揮できる状態まで持っていけたこと。
ここについては、今回Tune Upが大きくサポートできた部分だと考えています。
7. 今回は「スパイス」ではなく「下ごしらえ」
私は普段、アスリートへのTune Upのサポートを「スパイス」と表現することがあります。
選手が長年積み上げてきた競技技術や努力が料理の本体。
Tune Upはそこに少しだけスパイスを加え、よりパフォーマンスを引き出す。
でも、高橋選手については少し違いました。
「下ごしらえ」
本来の力を発揮できる状態をつくる。
高橋選手は、すでに十分すぎるほど頑張っていました。
だから今回必要だったのは、さらに何かを追加することではありませんでした。
8. 試合前に必要なのは足し算だけではない
アスリートは真面目であればあるほど、「もっと練習しないと」「もっと鍛えないと」と考えます。
もちろん、強くなるためには練習が必要です。
でも、頑張ることと、試合当日に最高のパフォーマンスを出すことは必ずしも同じではありません。
強くするために、何を足すか。
ではなく、
強さを出すために、何を減らすか。
トレーニングする日、身体を整える日、負荷を下げる日、そして完全に休む日。
それらを含めてコンディショニングです。
今回、高橋選手には何度も「休めば勝てる」と伝えました。
そして最終的に、1R58秒TKO勝利。
高橋選手、本当におめでとうございます。
ATHLETE CONDITIONING
頑張っているのに、
試合で力を出し切れない選手へ。
天満橋のパーソナルジムTune Upでは、整体・トレーニング・身体の使い方・疲労管理を組み合わせ、選手が持っている能力を競技で発揮しやすい身体づくりをサポートしています。
谷町四丁目・北浜・堺筋本町周辺からのご相談はもちろん、競技パフォーマンスに悩むアスリートのご相談も受け付けています。
公式LINEから相談する参考文献・関連記事
- Bosquet L, et al. Effects of tapering on performance: a meta-analysis. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2007.
- Meeusen R, et al. Prevention, diagnosis and treatment of the Overtraining Syndrome. European Journal of Sport Science. 2013.
- Kellmann M, et al. Recovery and Performance in Sport: Consensus Statement. International Journal of Sports Physiology and Performance. 2018.
関連記事:練習しているのに動けない?アスリートの疲労と回復の考え方
※本記事は一選手のコンディショニング事例であり、同様の方法ですべての選手のパフォーマンス向上を保証するものではありません。トレーニング内容や休養の必要量は、競技・時期・身体の状態によって異なります。






