練習しているのに動けない?アスリートの疲労と回復の考え方

アスリートの疲労と回復をテーマにしたTune Upのコンディショニング解説

最近、アスリートをサポートする機会が増えて感じることがあります。

それは、試合前なのに追い込みすぎている選手が想像以上に多いということです。

本来、試合が近づいてきた時期は、これまで積み上げてきた筋力・体力・技術をさらに無理やり伸ばすというより、試合当日に最大限発揮できる状態へ仕上げる期間です。

しかし実際には、「今日は動きが悪い」「キレがない」と感じると、練習不足だと思い込み、さらに走る、練習時間を延ばす、筋トレを追加する。

その結果、さらに疲労が蓄積し、もっと動けなくなる——。今回は、このアスリートが陥りやすい疲労の悪循環について、スポーツ科学とTune Upでの現場経験を交えながら解説します。

試合前の追い込みすぎによる疲労とパフォーマンス低下を解説するイラストバナー

1. 試合前の追い込みすぎが動きを悪くする

試合前になると、「もっと練習しておかないと不安」「相手は今も練習しているかもしれない」と考える選手は少なくありません。

しかし競技前には、練習強度をある程度維持しながら総練習量を減らし、蓄積した疲労を抜いていくテーパリングという考え方があります。

試合前に必要なのは、必ずしもさらに身体を追い込むことではありません。

試合前だからこそ、疲労をコントロールする。
これまで作ってきた能力を失わず、試合当日に発揮できる状態へ整えることが重要です。

2. 動きが悪い=練習不足とは限らない

選手が特に気をつけたいのが、動きが悪い日に「練習不足」と判断してしまうことです。

動きが悪い

練習不足だと思う

さらに走る・練習する

疲労が増える

さらに動きが悪くなる

能力そのものが落ちたのではなく、蓄積した疲労によって、本来持っている能力を発揮できていない可能性があります。

筋肉痛がなくても身体に疲労が蓄積しパフォーマンスが低下する仕組みを解説するイラストバナー

3. 筋肉痛がなくても身体は疲れている

疲労は、筋肉痛や筋肉の張りだけでは判断できません。

筋肉側で起こる末梢性疲労だけでなく、脳や脊髄を含む中枢神経系や神経筋機能もパフォーマンスに関係します。

筋肉痛以外にも確認したいサイン

・身体がいつもより重い
・反応が遅い、キレがない
・集中力が続かない
・同じ練習なのにキツく感じる
・心拍数の反応がいつもと違う
・睡眠の質が低下している
・やる気が出ない
・力まないと動けない

「筋肉痛がない=回復している」ではありません。

4. 「動ける=回復している」ではない

先日、減量中のボクサーからこんな相談がありました。

実際にあった相談 以前より早く心拍数が上がるようになった。
コンディショニングを受けているので身体は動く。
しかし、身体そのものはずっとだるい。

このような場合、単純な筋疲労だけでなく、練習負荷、減量によるエネルギー不足、水分、睡眠など複数の要因を考える必要があります。

さらに注意したいのが、コンディショニングを受けて動きやすくなったことで、「回復した」と勘違いしてさらに追い込むことです。

疲労している

コンディショニングで動ける

「まだ練習できる」と思う

さらに追い込む

疲労がさらに蓄積する

動ける身体と、回復した身体は同じとは限りません。

5. 疲労レベルと回復期間の目安

疲労からの回復期間は、競技、練習内容、睡眠、栄養、減量、個人差によって大きく変わります。

そのため医学的な基準ではありませんが、現場で状態を整理する目安として5段階に分けると分かりやすくなります。

疲労レベル 状態の目安 回復期間の目安 対応
Lv.1 少し身体が重い程度 〜24時間 睡眠・栄養を確保
Lv.2 軽い筋肉痛・動きがやや重い 24〜48時間 負荷を少し下げる
Lv.3 スピード・キレ・出力低下 48〜72時間 高強度練習を控える
Lv.4 数日パフォーマンスが戻らない、強いだるさ 3日〜1週間以上 練習量を大きく調整
Lv.5 長期的なパフォーマンス低下、睡眠や気分にも変化 数週間以上の場合も 専門的な評価も検討

重要なのは、「72時間休んだから大丈夫」ではなく、72時間後に本当に身体が戻っているかを確認することです。

6. 練習しない=休養ではない

今回、特に強く伝えたいことです。

「練習しない日」と「回復する日」は同じではありません。

筋トレをしなかった。走らなかった。競技練習にも行かなかった。

しかし朝から外出し、電車に乗り、数時間ショッピングをして一日中歩き回っていれば、疲労が強く蓄積したアスリートにとっては、十分な休養にならないことがあります。

もちろん、一般の方であればショッピングや外出は良い身体活動や気分転換になります。

しかし試合前のアスリートは目的が違います。

休養とは「何もしないこと」ではなく、「次の練習や試合で高いパフォーマンスを発揮できる状態まで身体を回復させること」です。

7. 疲労すると身体の使い方も変わる

疲労が蓄積すると、筋活動のタイミングや身体の協調性が変化することがあります。

Tune Upでは、疲労が強い選手ほど姿勢や身体のポジションが崩れ、本来なら全身で出せる力を腕や脚だけで無理やり出そうとしているケースをよく見ます。

疲労が蓄積

姿勢・身体の使い方が崩れる

全身で力を伝えにくくなる

腕・脚など局所で頑張る

余計にエネルギーを消費する

さらに疲れる

姿勢だけでスタミナが決まるわけではありませんが、身体を効率よく使えない状態では、同じ動作でも余計な負担が増える可能性があります。

8. パワーやスピードは筋肉量だけでは決まらない

筋肉量や筋力は、もちろんアスリートにとって重要です。

しかしパワーやスピードは筋肉量だけでは決まりません。

  • 神経系の働き
  • 運動単位の動員
  • 力を発揮する速さ
  • 筋肉同士の協調
  • 身体のポジション
  • 競技技術

筋肉を持っていることと、その筋肉を競技中に効率よく使えることは別です。

疲労でパワーが出ない日に「さらに筋トレをする」が必ずしも正解とは限りません。

9. サプリメントより先に考えること

アスリートにとってサプリメントは便利ですが、疲労しているからといって「何を飲めば回復する?」だけを考えるのは順番が逆です。

まず確認したいこと

・十分なエネルギーを摂れているか
・糖質が不足していないか
・たんぱく質を確保できているか
・水分、電解質は足りているか
・睡眠時間と睡眠の質はどうか
・練習負荷が高すぎないか

この土台を整えたうえで、目的を理解して必要なサプリメントを使うことが大切です。

10. 試合前は「強くなる」から「強さを発揮する」へ

通常期
能力を高める


試合が近づく
競技動作へ落とし込む


試合直前
疲労を抜きながら感覚を維持する


試合当日
持っている能力を最大限発揮する
強くなるための練習と、強さを発揮するための調整は別物です。

試合直前まで「強くなろう」と追い込み続けた結果、本番で疲れて動けなければ本末転倒です。

「今日どれだけ頑張ったか」ではなく、「試合当日に一番強い状態になれる選択をしたか」で考えることが大切です。

11. Tune Upがアスリートにできること

Tune Upでは、疲れている選手にさらに負荷をかけることが正解だとは考えていません。

その日の身体を確認し、

  • 今日は鍛えるべきなのか
  • 身体を整えるべきなのか
  • 負荷を下げるべきなのか
  • 完全に休むべきなのか

まで含めて考えることが、アスリートのコンディショニングだと思っています。

もっと頑張ることではなく、今持っている力を、もっと楽に発揮できる身体をつくる。

アスリート向けコンディショニング

天満橋のパーソナルジムTune Upでは、整体・トレーニング・身体の使い方を組み合わせ、競技パフォーマンスを発揮しやすい身体づくりをサポートしています。

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参考文献

  • Bosquet L, et al. Effects of tapering on performance: a meta-analysis. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2007.
  • Meeusen R, et al. Prevention, diagnosis and treatment of the Overtraining Syndrome. European Journal of Sport Science. 2013.
  • Kellmann M, et al. Recovery and Performance in Sport: Consensus Statement. International Journal of Sports Physiology and Performance. 2018.
  • Fullagar HHK, et al. Sleep and athletic performance. Sports Medicine. 2015.
  • Stellingwerff T, et al. Nutrition for recovery in athletes. International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism.

※疲労レベルと回復期間は診断基準ではなく、身体の状態を考えるための目安です。
強い倦怠感、息切れ、心拍数の異常、長期間のパフォーマンス低下などが続く場合は、疲労だけで判断せず医療機関やスポーツドクターへの相談も検討してください。